

——一方で、イカ天は、そういった日本の音楽業界のシステムとはまったく別のところにあったわけですよね? 出てくるバンドも、ある意味キテレツだったりして。
「ええ。当時、よくイカ天には取材に行っていました。イカ天ブーム、バンドブームは、日経エンタテインメント!が成長するときとかぶっていましたからね。それに、音楽業界的には“それはないだろう”みたいな、レコード会社の発想ではつくれないバンドがたくさん出ていました。結局音楽っていうのはパッケージビジネスだけじゃない、っていうことを感じさせてくれたのが、イカ天の力だと思います。テレビ界の目線から見るとバラエティー的センスがあって、事務所的に見るとアーティストの可能性とか、ライブも視野に入ってくる。イカ天は、その辺のバランスが上手く取れていたから、新しい才能を次々と生み出したんだと思います」
——イカ天は、そのアーティストのエンターテインメント性全体を見ていたということですか?
「トータルな部分は音楽なんですけど、レコード会社だと、CDが売れるってことばかり念頭にいっちゃうでしょう。CDを売る力がアーティストの力だ、って勘違いしてるところがあると思うんですよ。イカ天は、そこをちょっと揺さぶってくれた気がしますよね」
——そういう意味では、WEB版イカ天にはどういったことを期待していますか?
「すごく楽しみですね。なぜかと言うと、20年前とは時代状況がいくつか変わっているからなんです。一つは、技術の進歩があって、パソコンを中心としたインフォメーション・テクノロジーが、素人をプロに近づけていますよね。単に曲づくりのみならず、練習の部分や、人集めに関しても。昔は、スタジオの前にメンバー募集の紙を貼ったじゃないですか? でも、それももうネット上でできてしまう。だから、そんな状況から一体どんなものが出てくるのかっていう部分に期待ですね」

——プロモーションも自分達でできる時代になっていますからね。
「そうですね。それもあると思います」
——そういった意味では、イカ天は、ネットでマイクロソフトさんの力を借りた完璧なプロモーション・ツールでもあって…。
「うまいですね(笑)。そうなんですよ。インフォメーション・テクノロジーやパソコンは、クリエイターをサポートして盛り上げ、さらにはリスナーや消費者側も盛り上げて、本当に良い関係をつくっていると思いますね」
——今回、審査員のオファーには、すぐOKを出しましたか?
「すぐに、やらして頂きたいな、って思いました。審査というよりやじ馬の視点ですけど」
——今回はどういう観点で審査されますか?
「思い入れと、楽しさですね。今は、プロとアマチュアの境界がなくなってきて、もうテクニックの差ってそんなにないと思うんですよ。そうすると、何を伝えようとしているのかっていう思い入れとアイディアで何とかなるのかなって思っています。だから自分達も楽しいし、曲を聴いている人にも楽しさを与えて、周囲を巻き込んでくれるようなものに、ちょっと期待しますね」
——どちらかというと、品田さんはマーケティング的な側面を見てこられていますが、 今回は、むしろそういう部分じゃないところを見ようと?
「そうですね。今までのマーケティング的な発想じゃなくて、ライブの会場に行くと一緒に楽しめるよねっていう、リアルな部分でのすごさ。ネットから始まるんだけど、リアルな部分に落ちるっていうところがポイントになってくるんじゃないかな。21世紀の今、共有できるものがあるバンドこそ、素敵なバンドって気がする」
——なるほど。で、それは最終的に大きなヒットにつながる、と?
「そう。ネットで聴いて良い音楽だなって思ってライブに行くともっと楽しい、ってことになると、ネットで聴く音楽がまたもっと楽しくなる。だから、そういう良い循環をつくってくれるようなバンドに出会いたいです」
——オリジナリティーの部分に関しては、いかがですか?
「次を感じさせるオリジナリティーは、もちろん大切です。やっぱりそこそこ音楽を聴いていくと、“コレって誰々みたいな音かな”って予想できることが多いじゃないですか。でも、それをたまにひっくり返してくれるバンドってありますよね? そういうときの驚きや感動ってスゴいし、それがあるからこそ、この仕事を続けてこられたような気がする。だから、新しさやオリジナリティーにはやっぱりこだわりたいですね」
——品田さんの最近気になるアーティストって、誰ですか?
「どうかな? 半分ネタですけど、ジェロのインパクトはすごかったですね。(笑)。融合ってやっぱり面白いものをつくるんだな、って思いました。とても遠いと思っていた要素が融合すると、新しいものが出てくるっていうことが、ずっと意識としてあったんで、ヤられたって思いました」

——そういう観点でも、審査しますか?
「そうですね。センター試験じゃないけど、これを取ると偏差値が良いとかっていうのは、業界の論理、プロの論理だと思うんですよ。だから、そういった予想とは違うもの、スゲーだろっていうものを持ってくる勢い、想定外、予想外に期待しています。こんなのありかよって(笑)」
——では、最後に応募者にメッセージをお願いします。
「レコード会社の人達は、今元気がありません。でも、ライブやネットを含めて、実は音楽には元気があって、世界的に見ると新しい才能が次々と出ているんですね。ただ、今はその新しい才能が、まだ上手くヒットやビジネスにつながっていません。ですから、それを超えるパワーを持ってきてくれるのが、今回応募してくる皆さんだと思っています。新しい才能、新しいやり方を見たいと思っていますので、たくさん応募してくださいね」
品田英雄(シナダ・ヒデオ)
血液型 :A型
星座 :みずがめ座
1957年 東京都出身
1980年 学習院大学法学部卒業
1987年 日経マグロウヒル(現 日経BP)社に入社
1997年 月刊誌『日経エンタテインメント!』を創刊
2003年 同誌発行人に就任
06年6月 同誌編集長に復帰。10周年に向けた体制作りを担当する。
07年1月 10周年へのめどをつけ、編集委員に就任
08年1月 日経ホーム出版との合併に備え、新設局ライフスタイル局編集委員に就任。媒体開発業務を兼務する。
著書
『ヒットを読む』(日本経済新聞社 日経文庫)
『エンタテインメント・キーワード』(共著:日経BP社)
現在の主な連載・出演
日経MJ(流通新聞) 「品田英雄のヒットの現象学」
TBSラジオ 「大沢悠里のゆうゆうワイド」
FM横浜「Tips Town」
よみうりテレビ「ミヤネ屋」
日経トレンディネット 「品田流ヒット研究所」
その他
経済産業省 映像プロデューサー人材育成支援事業委員会委員
国土交通省 東京圏における国際文化拠点整備委員会委員 等を務めた
デジタルハリウッド大学 大学院 客員教授
趣味
サルサ(週末はたいてい六本木で踊っている)
自慢
岩井俊二監督の映画「花とアリス」に出演。大沢たかお、広末涼子と共演
信条
「いつもちょっとだけ掟破り」




















